
昔々、各地を巡っていた一人のお坊様が「興法寺(こうぼうじ)」の里へやって来ました。
その日は照りつけるような暑い夏の日で、お坊様は滝のように汗を流していました。「喉が渇いた。水を一杯飲ませてくださる家はないものだろうか」と呟きながら歩いていると、はるか向こうに一軒の家が見えました。
お坊様がその家を訪ねて「ごめんください」と声をかけると、年老いたおばあさんが出てきました。お坊様が「喉が渇いてもう歩けません。どうか水を一杯いただけないでしょうか」と頼むと、おばあさんは「今すぐ差し上げたいのですが、飲み水がなくなってしまいました。遠くまで汲んできますから、しばらく待っていてくだされ」と言い、急いで家を出て行きました。
しかし、おばあさんは一時間経っても戻ってきません。やがて、汗だくになったおばあさんが帰ってきて、「お待たせしました。お飲みくだされ」と水を差し出しました。お坊様は「これはもったいない、ありがたいことだ」と手を合わせ、その水をぐっと飲み干しました。
生き返った心地になったお坊様が「ところで、この水はどこから汲んできなさった?」と尋ねると、おばあさんは「この里には飲み水がなく、向こうの山の谷間から汲んできました」と答えました。それを聞いたお坊様は「それは大変なことだ。お礼に、私が水が湧く場所を探してあげましょう」と申し出ます。
おばあさんが驚いて「あなた様は、もしかしてとても偉いお坊様ではありませんか」と尋ねますが、お坊様は「私はただの通りすがりの坊主でございます」とだけ答え、外へ出ていきました。
お坊様は持っていた杖で地面のあちこちを突いて回りました。そして、ある場所を突いたとき、そこから冷たくて綺麗な清水がこんこんと湧き出てきたのです。おばあさんは「水だ、水だ!ありがたい、ありがたい」と大喜びしました。
それからというもの、この里の人々はこの湧き水のおかげで、飲み水に不自由することがなくなりました。この杖で水脈を当てたお坊様こそが、後に「弘法大師」と呼ばれる大変偉いお坊様でした。
住所 : 〒932-0127 富山県小矢部市興法寺2443
駐車場なし(住民の方々のご迷惑にならない様注意しながら周辺に停車してください)