
これは、富山県小矢部市の鷲ヶ島(わしがしま)にある鷲尾神社に伝わるお話です。
昔、小矢部川と勝川が合流して一つの川だった頃、少し雨が降るとすぐに川が氾濫し、村には大きな被害が出ていました。
ある日、村人が田んぼの水を見に行くと、用水路の水が全く来ていません。「何かが詰まっているのではないか」と様子を見に行くと、案の定、用水路に大きな木の切り株が詰まって水を塞いでいました。村人は邪魔な切り株をどかそうと、腰につけていた鎌を取り出して切り株に打ち込みました。
すると驚くことに、切り株からまるで血のように真っ赤な汁が噴き出してきました。村人が慌てて腰の手ぬぐいを切り口に当てましたが、赤い汁はますます勢いを増して止まりません。ようやく汁が止まった後、恐る恐る切り口を見ても何も見つかりませんでしたが、村人はこの切り株が「とてつもない力を持っているのではないか」と考え、重い切り株を苦労して村へ持ち帰りました。
村の衆を集めて見てもらうと、「これは桐の木だ。傷ついたところから血が流れたような跡がある。もしかして川上から流れてきたご神体ではないか。このまま放置したら罰が当たるから、祠を建てて祀ろう」ということになりました。
こうして村人たちの手で桐の木を祀る祠が建てられると、不思議なことに村では川が氾濫することが少なくなり、お米がたくさん取れるようになりました。
しかし、ご神体が桐の木であったためか、村では奇妙なことが起こるようになりました。村人が桐の下駄を履いて歩くと、必ずと言っていいほどつまずき、足の骨を折るような大怪我をしてしまうのです。村人たちは「これは神様である桐の木を足で踏んでいるから罰が当たったのだ。もっとご神体を大事にしなければならない」と考え、村で桐の下駄を作ることを禁じました。
この不思議な出来事があって以来、村では桐の下駄を履くことを慎むようになり、下駄で怪我をする人もいなくなったということです。
この時に建てられた祠が現在の小矢部市にある鷲尾神社の始まりだとされており、同神社に祀られている三体の神様のうちの一体が、この「桐の木のご神体」であると言い伝えられています。
住所 : 〒932-0821 富山県小矢部市鷲島
付近に公民館の駐車場があります